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2010年 02月 06日

昨夜の雨で水かさの増す奥山中。大日谷の渓流を遡る二人の男がいた。
「意外でしたなあ。上流では降っていたのですか。腰まで何度も浸かりましたわい。」
曽良は、先を急ぐ権十郎の動きに舌を巻いていた。靄のかかる川面を、八艘跳びのように岩から岩へ跳び移っていく。奴にとっては、ここは箱庭同然かと思う。
 小笹の茂みを一気に走りぬけ、渓流沿いの山道から朝靄のかかる川面に出る。凛とした冷気が水面一面に広がっていた。 
 「さあ、いよいよ九谷に入ります。」
渓流が霊気を発し、数拾の集落の軒下を這うように包み込んでいる。靄の中を野鳥の声が近ずいては過ぎ去っていく。翁を奮い立たせたあの後藤の南京焼は此の地で生まれたのか。
「翁も・・・・」と感慨深げに立ちすくむ曽良。
「左様に、桃青も来たかったろうに」
「否、ここは拙者の任務で」
「登り窯はあちらの川向うに、錦窯と工房は村の下に眠っております。」
「証拠は消されたということか」
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九谷A遺跡出土の色絵磁器片。朱の片は後藤家の”五三の桐”紋の一部。青手片は卍紋。

by hirai_tom | 2010-02-06 01:11

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