3-7   

2010年 02月 05日

「今は、お客様、少し時期が早ようございます。やがて、木の葉が赤く染まるころには、山々が燃えるように美しくなります。近々、この別邸も冬支度を終えた北前船の船頭衆のお宿となります。」 
「さて、船頭衆の特別のお宿ですか、これは、豪勢なことですな。」
「はい、女衆は心待ちにいたしております。」
「船頭衆は、随分と羽振りが良いようですな。異国にでも出かけるのですかな。」
「とんでもございません、昔はともかく、今はご法度ご法度、ここが飛びますよ。」
「これはこれは、馬鹿なことを申しましたなあ。長旅でちと頭がおかしゅうなりましたわい。」
湯座屋の方から、小走りに小僧が駆け寄ってくるのが見える。
「お客様、朝餉の御用意ができて御座います。主人がお待ち申しております。」
「これはつい長居をいたしましたわい、お暇いたします。」
泉屋の前では、北枝が、無粋な面持ちで待ち構えていた。
「御師匠、どちらに行かれておられたのです。曽良様も見当たりませんし、拙者の腹もほれ、このとうりで。」
「何々左様ですか、曽良は見当たりませんか、そういえば、昨夜、薬草を探さねばと言っていましたが、捨て於いてください、そのうちに顔を出すでしょう。」
[PR]

by hirai_tom | 2010-02-05 00:12

<< 4-1 3-6 >>