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2010年 01月 21日

「のう、お主とはしばしの別れやも知れぬぞ。」
一瞬戸惑う桃青に
「少々、野暮用がおきてのう。」
「やゝでも出来たか。」
「む、それもある。が、それはさておき、近頃のお主、随分と腕を上げてきたよのう。」
「俺の句に息吹を与えたはお主ぞ。」
 「いやいや、俺はのう、我等が集団の力を自慢したまでの事よ。それもこれも皆御先祖様の汗と涙の賜物よ。吾等が代になるともう愚痴ばかりじゃて。特に守景が去った今では先代に肩を並べるものはちと出来ぬわ。これからはお主の時代じゃて。風の便りに名句を待つこととしょうぞ。」
 「簡単にお主は云うが、金屋(後藤)の小判造りとはちと違うぞ。所でお主、守景というとあの久隅守景か。そうか、やはり加賀にいたのは本当だったのか。」
 「そうよ、俺が連れてきた。我等が皿が気に入ってのう。どうしても筆を取りたいということであった。この男なら先代と並ぶ画を描くと踏んだのよ。値違わず大した男よ。ほれ、以前お主にも見せたよのう。ボラ待ち櫓の絵皿ぞ。能登の穴水の漁法よ、四角に組んだ網を川底に沈め小魚を獲るあれよ。」
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by hirai_tom | 2010-01-21 08:37

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