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2010年 01月 05日

事実、松尾家の祖先は代々服部郷に住し、父は柘植氏、母は百(桃)地の出である。代々忍びの系統を持つ桃青も又、藤堂藩と共に生きる定めであった。”伊賀を秘蔵の国、上野は要害の地”とした徳川家にとって藤堂藩は重要な情報機関であった。より有用な隠密を育て上げ、国々に完璧な情報網を造り上げることが、藩の使命であった。桃青は母方の“桃”の一字を使用することにより、自分の生きる道を定めたのであった。
 「さあて、そこが問題でな、容易いものではないぞ。それよりも、お主を取り巻く後藤家の技術には凄いものがあるが。」
 「何々、我等の技術集団と云っても、所詮は山師の集まりぞ。それ、吾等が桃太郎のお伽噺じゃて。クンクンと探りを入れる”犬”じゃが、仲間内では砂鉄を嗅ぎ出す技術者じゃ。さあて、お主、桃は何じゃと思うぞ。お主の御先祖様の“桃”じゃぞ。」と目を据える。
「ほれ、桃はホトじゃ。鉄を溶かす炉の事じゃ。詰まる所、お主も俺も同じ穴の貉よ。猿は飛んだり跳ねたり芸を売って諸国を歩き、雉は山林を歩きまわる木地師。吾等が桃太郎集団はな、先ず腕を磨くことにある。腕をな。」
 才次郎はいつの間にか舟を漕ぎだしたようである。
 「桃太郎や桃太郎。吾等が吹くは、金屋子の神。吹く(福)の神。福の神。」
 ”福”の神は、いつの間にか高いびきに変わっていた。
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by hirai_tom | 2010-01-05 18:36

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