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2010年 01月 03日

 延宝二年(一六七四年) 所は、江戸。宗房は幕府御用達魚商、鯉屋(杉山)山風や、名主、小沢卜尺等の助けを得て、小石川に於いて神田上水道の水番小屋を居とし、松尾桃青として句会に出る傍ら、上水道の現場監督の役目を担っていた。
 時折、ひょっこり才次郎が顔を出す。何とも面白い男であった。「加賀藩邸より出仕つかまつった。」とか言っておどけている。才次郎の姿をみるとホッとする桃青であった。
 特に、工事現場では多才な才次郎の助言が生きてくる。厄介な問題が起きると、人夫姿で現れもした。夜ともなれば、酒を酌み交わして、水番小屋が白むまで話は尽きることはなかった。
 「吾等の話は世人が聞くと腰を抜かす事よのう。」
 「お主と、こうして一献やる時だけじゃ、こうして本音が出せるのは。」
「闇の世界に生きる者の宿命じゃて。」
 二人に共通するものは、権力の裏に潜む闇の世界にあった。それは、闇から闇へと受け継がれ、後世、謎が謎を呼ぶいわば伝説の世界であった。二人にとっては世人にさらけ出すことの出来ない世界であった。
 「桃青、お主だけはのう、決して、汚れた世界に生きるでないぞ。その内、お主を取り巻く者たちが必ず、主を引き立ててくれようぞ。お主はのう、名が上がればそれで良いのじゃ。主が有名になればなるほど、お主の隠密性は高まることよ。そうなれば、誰ひとりとしてお主を忍びとは思わんはずじゃ。」
 
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by hirai_tom | 2010-01-03 18:32

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