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2010年 06月 13日

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「さて、一時半はすぎましたぞ。」
「左様、晦日故外は、闇夜でしょうなあ。」
「私には寧ろそのほうが好都合で」
「左様かな、お互い何時までも若くは無いからな。」
「何々、私の方は大丈夫。師匠にはまだまだ負けませんぞ。」
「またまた、御二人のやり取りが始まりそうで御座いますな。」
「ここは、高笑いは出来ませんな。」
「処で、ちと、曽良に相談があるのじゃが。」
「左様で御座いますか、大よその見当はついて御座います。」
「流石は曽良。実は昨日、文をしたためた。」
翁、大垣の近藤如行宛への文を取出す。文には“みちのくいで候て、つつがなく北海のあら礒日かずをつくし、いまほどかがの山中の湯にあそび候。中秋四日五日比爰元立申候。つるがのあたり見めぐりて、名月、湖水か若ミのにや入らむ。何れ其前後、其元へ立越可申候。嗒山丈・此筋子・晴香丈御伝可被下候。以上”とある。
「で、御師匠は名月を美濃にて見られぬ御事情が。其処で、拙者だけでもと云う事で御座いますか。」
「曽良とは同行二人の旅を続けて参りましたが、小松へ戻らねばならぬ事情が出来ました。こうして、如行宛の文はしたためたのだが、名月までには無理に思える。去れば・・・」
「美濃では皆様御待ちで御座いましょう。なあに、拙者が先行して御事情を。」
「其の様にしてくれるか。誠に申し訳ない。小松で生駒万子が是非逢いたいと云うて参った。」
「否、其れだけでは無い御事情も御座いましょう。」
「何か在るのかな。」
権十良が思わず笑った。
「北枝様の目の届かない処で、名月を御一緒したい御人が居られるのでは。」
「さて、今夜は此の位で。」

by hirai_tom | 2010-06-13 02:04

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