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10-11   

2010年 05月 25日

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「左様なお気持ちは充分に、ボラ待ち櫓から遥か佐渡の地に想いを募らせて居られたやも知れませぬ。」
「さては、お主達の第三期の九谷窯は肥前から白磁を取り寄せての物であったか。」
「はい、前回は二代藩主利明公の許、才次郎忠清と二代柿右衛門が肥前の職人を連れ帰藩し、新たに築窯をいたしました。」
「左様に、其れが永くは続かなかったとの事であったが。」
「はい、何せ九谷は奥山、冬ともなれば雪の量も半端では御座いませぬ。是は、肥前では思いもよらぬ事。その上、燃料となる木を切り過ぎ申した。下流の城下が度々、水攻めに遭う始末でな。」
「奥山故、藩では何かと秘密は保てたが、時には勝てぬか。」
「はい、城下では絵師は事足りますし、絵付けの“錦窯”も可能で御座います。」
「肥前にて渡りを付けたとは、左様な含みもあっての事か。」
「絵付けに於いては、権左右衛門と才次郎定次が加賀の色絵付けを完成し、二代柿右衛門と才次郎忠清は新規の錦窯技術を持ち帰りました。」
「其の上に、肥前の“素地”さえ手に入れば、鬼に金棒と云う事か。」
「去れど、初代・二代と去った後、三代以後の柿右衛門家は新しい肥前の南京焼を生み出さねば為らなかった。残された妻子と十人の女工達は、苦労をかさね、後世に残る柿右衛門の赤絵を生み出した様だ。」
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by hirai_tom | 2010-05-25 22:06

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