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2010年 04月 27日

十五尺余の瀧を背に桃妖は物語り始めた。
 「道明には“さくら”と云う年頃の娘がおりました。何時もの様に滝壷に向かい洗い物をしておりましたが、何気なく瀧を見上げると、瀧の上に裸体の若者が突っ立っている。娘にはその若者が龍の化身におもわれた。娘は慌てるように家路を急いだ。しかし、年頃の生娘故に若者の姿が脳裏から離れない。いつしか、娘は何時もの仲間から遅れがちに洗い物をするようになっていた。」
 「如何云う若者であったのかな」
 「此の上の谷の“しる谷”の者でしたが、実は、この村の大半は蓮如様の門徒で御座います。越前での戦いで華々しく戦った連中です。中でも、この若者は中々の悪党で“一揆”の仲間からも一目置かれておりました。」
 「さすれば、その娘。惚れたかな。」
 「はい、道明が心配して跡をつけました。」
 「逢引が見つかったか。」
 「されば、許す外ないであろう。」
 「されど、扇子屋様は代々、御薬師様を護って来られた御家柄。一向宗とは対峙してまいりました。」
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by hirai_tom | 2010-04-27 08:24

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