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2010年 04月 23日

幅二尺ばかりあろうか、その急坂を半町余り下ると、塊とも云える岩盤が拡がりを見せていた。立ち止った翁の横を「爺さま、危ないよ!」と数人の小童がぶつかる様に駆け下りて行く。岩塊には小童の仲間達の姿が見える。釣り糸を垂れている者・丸太の橋から飛び込む者・白波立つ上流の浅瀬で興じる娘達。
「此の地は正に“桃源郷”じゃな。若旦那に吾が”桃”を与えたは間違いではなかったわ。」
「恐れ入ります。されば、此処も月夜には“幽玄峡”と成ります。」
「其れは面白い。“道明ヶ淵”とは、何か物語り出来そうなところじゃな。」
「はい、扇子屋様の御先祖に“道明”と云う人が居られました。」
「御隣の御宿ですな。さて、道明はお人でしたか」
「はい、実は・・・・」
「如何した。御隣とは何かあるのかな。」
「はい、私事で御座いますが、幼馴染の娘児が許嫁で御座いまして・・」
「是は参りました。なあ、曽良。ここで、恋敵が現れるとはなあ。」
「左様で左様で、是は又、目出度い目出度い。わっはっはあ。これは面白き事よ」
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by hirai_tom | 2010-04-23 18:34

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