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2010年 04月 14日

戌の刻  泉屋奥座敷    
                    一芭蕉・曽良・北枝・自笑・久米之助一
 「お師匠、臥せりがちで申し訳ございません。道明ヶ淵周辺、如何で御座いましたか」
 「北枝は何度か参っておるらしいが、此の山中の地は良き湯に恵まれているだけでなく、景勝の地をも抱えてもおるわ。お主も是非、散策するがよい。」
 「明日もお日柄がよろしいかと、お師匠様と是非ともお出掛けなさいませ。」
 「左様に致しましょうか」
 「さて、本日は誠に有難う御座いました。久米之助もさぞご機嫌かと」
 「はい、お師匠様から俳号を賜り天にも昇る心地に御座います。」
 「左様でありましたか、其れはよろしゅう御座いました。お師匠、号は何と。」
 「吾が“桃青”の一字を分け、“桃妖”とな。」
 「久米之助様、是は、余程の事に御座います。お師匠が“桃”の号を分け与えなさるのは、殆んど、御身内に限られて御座います。」
 「左様、久米之助否、“桃妖”此れからは、今一度気を引き締め、心して当たらねば成らぬわ。」
 「はい、左様に心得て御座います。」
 「何々、左様に気を使わなくともよいのじゃ。お手前の素直な心根に惚れてな『詩経』の周南に“桃之夭々 其葉蓁々”と在る。お主には“妖々”の方が似つかわしく思えてな。
  “桃の木の其葉ちらすな秋の風” 何時までも妖々蓁々たれよな。」
 「はい、此れからも一層精進し、俳諧の道に邁進致します。」
 
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by hirai_tom | 2010-04-14 00:10

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