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2010年 03月 27日

「何が有ったとしても、今は全ては土の下で御座います。」
 「左様で御座るな。お師匠には左様にお伝え致すとして、目の前の白龍が陽の光で天にも昇るようだ。千束瀧とは豪勢な。」
 「瀧の上は“千石ヶ原”と言うてな、千束の薪を滝壷に落としたと伝わっておる。さあ~て、お主に見せたいものがある。」
「この瀧の上に、まだ何か残っておるのか。」
 千束瀧川の右岸を瀧上に向かって急坂が伸びている。四五町もあろうか、黄葉した山道を進むと赤づんだ段状の物が見えて来た。近づくと、陶土を焼き付けた階段であった。
 「如何ですか、立派な物でしょう。」
 「奥山には不似合いな物ですなあ、こうした物は“韓”“朝鮮”にしかないものと思っていたのだが、これは驚きましたな」
 「父権左右衛門が築きました。村人は“焼附坂”と呼んでおります。」
 「千石原には何か御座いますかな」
 「九谷周辺には特殊な鉱脈が御座いましてな。吾等には何とも魅力のある地でな、ほれ、瀧の中程、あの赤巌も役に立つ。背山には陶石、五色谷、呉須穴と南京焼の材料には事絶たん。燃料も豊富でな、かって、この千石原一帯は赤松の林であった。今でも、ほれ、其処彼処に見事な五葉松が見られるわ。此処で焼かれた物は“かきのうえもん”ではなく“瀧の上もん“と呼ばれておるわい。」
「これは面白い、“焼附坂”と共に御師匠への手土産と致しますかな、あ、はあ、はあ・・・。左様か、最初の秘密窯は瀧の上になあ・・・左様で御座ったか。」

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by hirai_tom | 2010-03-27 20:32

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