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2010年 03月 19日

「千束瀧ですよ、取りあえず瀧下まで行きましょう。」
権十良は声高に叫ぶと、響音に向かって波しぶきを上げた。水かさは心持減った様だ。曽良も負けじと後を追う。
十町ばかり遡ったろうか、緑樹と黄樹の間を割る様に滝壺に向かって白龍が轟音を立てている。百尺ばかりはあろうか。権十良の自慢の顔が目に浮かぶ。
「奴め、岩間に頭を突っ込んでおるわ、裏をかきよって」
その岩間には、水しぶきを浴びて白く光る大文字草の群。山男と不似合いな山草の美しさが曽良の疲れを癒していた。
「谷水に武者ぶるいがするわ、お主もどうじゃ。」
「充分浸かっておるわ、それより、九谷で幾つかの御社が見られたが、お主達の火入れの祈りは、加具土の神の祀られた秋葉の社。さて今一つ、宇賀御魂命を祀った社がちと気になってなあ。」と曽良は滝つぼに向かって声を張り上げた。
 「やはりお主気づいたか、かって俺も探りを入れた事がある。」
 「証拠は掴めたのか、何か、宇喜多殿との係わりはあったのか。」
 「何とも言えぬわ。大聖寺城下には“水守の社”がある。御家老神谷殿の肝煎りの社でな、此方の社と如何も通じている様に思われてな。大日山の礼拝所やも知れぬ。」
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by hirai_tom | 2010-03-19 00:10

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