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2010年 03月 13日

「左様で御座いますなあ。しかし、疑う訳では御座らぬが、弥三右衛門が柿右衛門とは、これは拙者にはちと、解せません。」
「柿右衛門を名乗るは後の事で御座いましてな、始めは喜三右衛門と申しました。この“喜”の字には、ほれ、はっきりと吉次の“吉”が挿入されて居ります。その後、加賀の一字を加え加喜右衛門とした後、初代酒井田柿右衛門が誕生するという事で御座います。何せ、裏には加賀藩が付いて居ります故、資金には事足りませんからな。動かぬ証拠は、“最初に出来上がった色絵の南京物は、加賀藩の御買手が購入した“と柿右衛門家の史料には御座いますから、御調べなさるがよいかと。さて、これで御納得されましたかな。」
 「さあて、これは恐れ入りました。後藤一族は奥が深くて、吾等には皆目。お師匠が以前に、おっしゃられた事がこれでようやく解りましたわい。」
「ところで、権十良様は何時まで、田村様で通されるのですかな。」
「ああ、これも参りましたなあ。拙者にも分かり申さん。帰藩した父弥三右衛門が、酒井田村から“田村”権左右衛門と名乗りました故、ほとぼりの冷めぬ内はと思っているのですが。まあ、そろそろ此方での役目も終える事故。京に戻れば、田村姓はいずれ幻と成ろうかと。」

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by hirai_tom | 2010-03-13 00:52

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