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2010年 03月 04日

 戌の刻  泉屋の奥座敷、庭より権十良参上。

「少々、雨が落ちてまいりましたわい。」 
「ささ、此方に此方に。」
「御師匠、今朝は、権十郎様と奥山の九谷まで足を延ばしました。明朝は、延ばし足らぬ処をと。」
「曽良も心して当たらねば仮病がばれてしまいますぞ。のう権十郎」
 「さあ、その事よりも、長旅故に本当に御病気になられてはと心配いたしております。」
「なあに、心得ております。その時はその時で、山中のだら長湯が良く効きます程に。さあさあ、それより本題に入りましょうぞ。」
 「さあて、九谷は如何であったかな。」
 「御師匠が思われた通りの良いところで御座いましたぞ。あの場所ならば左様、何方も茶々は入れられませんなあ。」 
 「流石は前田家と云う処か。」
 「此方も、伊達藩同様に匂いは残っておりますが、皆、過去の遺物と云って良かろうかと。加州に入り、富山藩高岡から加賀本藩金沢、小松と残るは大聖寺藩と云う事だが。伊達様に問題が起きぬ限り、此方は大丈夫で御座いましょう。」
 「仙台の報告で、さるお方も御安心なされたことでしょうから、我等の役目も一段落と成りますかな。近々、将軍家も前田家を、御三家と同格扱いと成されましょう。」
 「左様な事になるのですか。」
 「なあに、年寄りの独り言です。内密に内密に。」
 
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by hirai_tom | 2010-03-04 08:42

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