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2010年 02月 27日

「さあさあ、後ほどに街辺を案内していただくとして、曽良と共に先程の御話の続きをお聞かせ下され。」
 「田舎者の話で恐縮いたしますが、吾らが祖は能登の穴水に居を構えていた長谷部氏の縁の者たちで、長氏を名乗りこの湯を護ってまいりました。」
 「数寄者が多いのはその辺に御座るな。御祖父様の名声は我等にも届いております。詳しくお聞きしたいものです。」
 「はい、洛の貞室様がまだお若い時のことで御座います、吾宿にお泊まりなされて居られまして、御愛用の琵琶を奏でておられました。」
 「成程、師匠も此方にお泊まりなされたのか。私も曽良も、師匠にはぞっこんでな、一昨年の鹿島詣は貞室様のいざないによって詣でたようなものです。吉野に遊んだ折には、“これはこれはとばかり花の芳野山”の句にただただ脱帽致しましたわい。左様、琵琶もたしなわれたと聞き及んでおります。」
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by hirai_tom | 2010-02-27 18:48

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