人気ブログランキング | 話題のタグを見る

13-1   

2010年 07月 08日

にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
(↑ポチッと)
 八月 五日(陽暦 九月十八日)
      朝曇。昼時分、翁・北枝、那谷へ趣。明日、於小松、生駒万子為出会也。[][][]則従シテ帰テ、即刻、立。大正侍趣。全昌寺へ申刻着、宿。夜中、雨降。

  『おくのほそ道』での翁、この日の記述。
 曽良は腹を病みて、伊勢の国長島という所にゆかりあれば、先立ちて行くに、
     行き行きて倒れ伏すとも萩の原           曽良
と書き置きたり。行く者の悲しみ、残る者の憾み、隻鳧の別れて雲に迷ふがごとし。予もまた、
     今日よりや書付消さん笠の露

 この日、那谷寺方面へ向かう芭蕉・北枝を黒谷橋で見送った曽良は、大聖寺へと旅立つ。     
曽良は泉屋が旦那である全昌寺に申の刻に着き、泊まる。外は雨である。
「御客人、田村様が御出でに御座います。」
「左様ですか、どうぞ御通し下さい。」
「暫らく御無沙汰致しておりました。」
「何をおっしゃいます。福井での工面をして頂き、御苦労をお掛け致しました。」
「此処は年寄りにお任せを」
「何々、御師匠とは少し御年をと聞き及んでおりましたが、奥山での健脚には参り申した。」
「処で、師匠は今日は小松で」
「左様で。明日は生駒万子様と共に天満宮の能順様にお会い為される手筈で御座います。」
「左様か。さてどの様に成りますかな、何せ小松天満宮は利常公の云わば根城。」
「それ故に、師匠も発句奉納をと。」
「そなた達の当藩滞在には、加賀本藩も心穏やかではない。別当能順は並みの御方では御座らん。さて、万子の立場も此処はちと、厄介な事になるわ。」
「天満宮には矢張り遺物が残って居りますか。」
「なあーに、お主達が伊達様の瑞巌寺で見られた様なもので、さて此処は能順様のお手並み拝見と云う処ですか」
「発句奉納には至りませんか。」
「左様じゃな。天神様の境内に、梅林院を訪ねる事になるが、先ず、門前払いじゃろう。」
「さて、弱りましたな。奥には入れませぬか」
「奥にも庭にもむりでしょうな。」
「洒落を云う時では御座いません。」
「左様で。庭には等身大の灯篭が。」
「で、矢張り伴天連の印が」
「十字が一目で判る様にな。」
 
13-1_a0151866_18465838.jpg
13-1_a0151866_18502313.jpg
13-1_a0151866_18531431.jpg

by hirai_tom | 2010-07-08 00:41

<< 13-2 12-2 >>